ナッツ北原㊙ダイアリー

恵方巻を味わって食べたことがない。

新生活が始まりましたね。

 新卒として働き始めて3週間が過ぎようとしている。コロナの情勢による影響で新入社員研修はオンラインになった。ITの仕事は覚えることが多い。そのうえオンライン形式では同僚とは話せず、気軽に質問もしづらい状況だ。これからしばらくは自分との闘いになるだろう。何もわからない。自分が何を理解できていないのか迷子になりそうになる。でもしょうがないか、落ちこぼれ慣れているから遅れは気にしない。早起きをする習慣がついた。始業の3時間前には起きて近所の公園で日光を浴びるのもルーティンになりつつある。この業界で熱意をもって働いていくことはできるだろうか。そんな一抹の不安を抱えながら、穏やかな池を眺め階段に接近しすぎて座礁しかけている鯉の群れを横目に歩いて公園を一周すると、引き返して家に帰る。先週の土日から自分の家は足場に囲まれている。風呂場の壁が腐って工事しなければいけなくなった。15年も暮らしていればそうなってもおかしくない。風呂に入ると、浴槽に備え付けの窓と排水溝の壁際にテープが貼ってあった。濡らしてはいけないらしい。その2か所をふさがれてしまうと、浴槽の中にしゃがみこむようにしてシャワーを浴びるほかにない。ここに住み始めた子供のころは、風呂に入るのが怖かった。浴槽の中には自分の全身が収まるほどの温水が溜まっていて、出ていくのも一苦労だった。今の浴槽は窮屈でむしろ頼りない。

無駄がないものは美しい

洗練された技術や、美術品の造形などに共通しているのは「無駄のなさ」だ。何度も改良を重ねていくうちに、それは機能性と美しさを兼ね備えるようになる。オリジン弁当のタルタルのり弁当はその最たる例といえるだろう。

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白身魚のフライが2枚、ちくわの磯部揚げが1本、端にはきんぴらごぼうを添えて、おかずの下には3枚の海苔が敷設されている。そのうえご飯の上には鰹節がのっていて、付属の醤油とタルタルソースで味付けできるというまさに至れり尽くせりの弁当。まずおかずについてだが、白身魚のフライとちくわの磯部揚げという組み合わせが素晴らしい。海苔おかかだけでも白米は十分に食べれるくらいなのに、ここにおかずが乗ると味が濃くてくどい弁当になってしまう可能性がある。しかし、淡泊な味のフライを使用しているためその心配は無用である。そしてちくわの磯部揚げ。唐揚げと言われて鶏肉が思い浮かぶのと同様に、磯部揚げといったらちくわ以外にない。そもそも見たことがない。この磯部揚げと醤油との相性が抜群にいい。これが白米の土地を二分するように斜めに鎮座している。かつてベルリンの壁がドイツを東西に二分したように。壁の向こうのまるまる肥えたフライを羨望の目で見つめるのはきんぴらごぼうだ。そして、おかずと白米に挟まれた海苔とおかかは醤油や揚げ物の油を吸収している。荒れた戦場についた痕跡が戦争を物語るように。そう考えると、このプラスチックの容器の中身がただの弁当ではなく人類史の縮図であることは明白ではないか。これが税込み320円とは驚きである。ただの食品が優れた芸術作品のように見えるのも、企業努力が裏に隠されているからだろう。

 補足だが弁当の横にある避難所は醤油やタルタルソースの空を入れる意図で配置されているが底が浅く、弁当が傾く可能性があるので、右利きの人は避難所を左側に向けて食べるといい。

最後のバイト

 今日でバイトが終了。2017年の夏から2021年冬までのおよそ3年半務めたレストランの仕事を辞めた。最初はキッチン用具と食用皿の洗浄から、半年後にはフライヤーにも入って仕事をしていた。キッチンではお客さんの注文が多すぎて、料理を準備し続けなければならない状況もありつらかったが何とか今まで続けてこれた。

 最後に裏口から帰るとき、ドアのすぐ裏には例の3匹の猫がいた。この3匹が揃って登場するのは2週間ぶりで、ちょうど辞める日に会えたのは運がよかった。そのうち1匹の自分によくなついている子猫の様子がおかしいことに気づいた。地面に張り付いて風化した黒いガムをなめている。ふと階段下にある裏口の方へ目をやると、残りの2匹はごみを漁っていた。私は近くのコンビニに駆けて2つのツナ缶を買い、裏口へと戻ってきた。今まで猫に餌をあげたことはないし、野生動物に餌をあげることが良いことだとも思ってはいないが、これは退職祝いだ。缶を開こうとすると魚の生臭いにおいに引き寄せられる。缶をうまく開けられずにプルタブが外れてしまったが、なんとか空いた缶の隙間にプルタブをねじ込んで外側に向かって引っ張るとやっと缶が空いておいしそうな肉が現れた。しかし、それは冷凍されていたようで、食べにくそうだ。表面を舐めているうちに溶けるから問題はないだろうが、温めてもらえばよかったかもしれない。そうとうお腹がすいていたのだろう。子猫よりも親猫が先にがっついている。缶は2つだけしか買わなかったから、1匹は順番待ちをすることになってしまった。建物の裏のアパートから人が出てきて、猫を見て笑った。それはかわいい猫の姿を見て思わずこみあげてきた笑いのように聞こえた。こちら側の建物は高さが低く、向こうからは死角になっていて自分の姿は見られなかった。その人が離れていくと、缶を置いた場所が袋のおいてある不安定な場所だったので、食べているうちに缶が階段から落ちてひっくり返ってしまった。急に餌が姿を消して困惑する猫のために、缶を持ち上げて餌を出現させる。再び食べ始めた猫を見守っていると、裏口が空いて他のアルバイトの子が階段を上がってくる気配を感じたので、私は猫のように逃げていった。

小石田純一

 世の中にはものまね芸人と呼ばれる人々がいる。彼らは大概、有名人に顔や体つきが似ていると言われてものまね道を志す。しかし有名人の風貌や仕草を真似する芸を披露するのはできても、それで売れるのは至難の業である。ましてや、石田純一のものまね芸人は売れるはずがない。

 

靴を脱いでほら、裸足だよって?

弱い弱い。

好きなタイプは東尾理子さん(石田純一本人の婚約者)ですって?

本人は浮気しているよ。

一世を風靡した長州小力でさえも、今は本人のほうがテレビに出ている始末。

 

 それでも一時期、小石田純一はテレビに出ていた。私が覚えているのは彼の高校時代のエピソード。高校2年生の修学旅行で沖縄に行ったが、友達が1人もいなかったらしい。それを見ていた私は、彼をかわいそうな人間だと思った。

 

 それから月日が流れ、高校2年生の私は修学旅行で訪れた沖縄にて、1人で美ら海水族館を巡っていた。同級生も引率の先生もたちまち姿が見えなくなった。私もまた、かわいそうな人間の1人だったというわけだ。その時並木政幸だった彼は後に小石田純一となったが…私は今も何者にもなれずにいる。

 

小石田純一さん、お元気ですか。

路地裏の住人?

 バイトが終わった日、私は裏口のドアから出て階段を上る。ここには従業員しか知らない路地裏の住人がいる。それらは重いドアが開く音を聞いて私のもとへと駆けつける。愛くるしい瞳に吸い込まれそうになる。ここには猫の親子が住んでいるのである。となりのビルの細い道を抜けて、こちらのビルの汚い路地裏へと抜けてくるのだ。この路地裏は閉店後に帰宅する従業員の抜け道に過ぎず、通りを歩く人は見向きもしない。しかし、猫にとってはここが自分たちの家であり、育った故郷でもある。最初に住んでいたのは1匹の猫だった。しかし、1年ほど前に子供が生まれ、気づいたときにはすでに親と子2匹の計3匹で暮らしていた。オス猫の行方はわからない。子供を産ませて責任をとるつもりはないらしい。私はこの猫の親子をあまり相手にせず帰っていった時期が長かった。しかし、最近はこの猫たちに会わなければバイトに行った気がしない。汚い路地裏に住んでいる割に、猫たちの毛並みは綺麗で撫でるとやわらかい感触がする。親猫は撫でられても全く気にする様子がないが、2匹の仔猫は撫でようとすると逃げて、こちらの様子をうかがうのだ。そのうち一匹は私になついてくれたようで、甘えた声を出しながら私に近づくのである。乳歯が生えたばかりで痒いせいか、手のひらを噛んできた。血はでないものの、まあまあ痛い。今度おもちゃを買ってあげてみようか。ここ2回のバイトでは、このなついた仔猫だけが顔を出し、2匹は姿を現さなかった。この子は私に会うために待っていたのだろうか。

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どっちが自分になついている猫だ?思い出せない

 

怪談話

 あれは真夏の夜に山道を車で走っていた時の出来事です。

 

速度を上げて走っていると前方に見覚えのある車が見えました。

 

私はすぐ、その車が昼間に町で見かけた軽自動車であることに気づきました。

 

車は後ろに初心者マークをつけていて、その隣には凹みがありました。

 

恐らく、駐車の際に壁にぶつけてしまったのでしょう。

 

こんな夜更けに山道を運転していて大丈夫かな…と少し心配に感じたその瞬間、

 

私は車にある凹みが昼間よりも大きくなって、窓にも小さなひびが入っていることに気づき焦りを覚えました。

 

しばらくするとカーブに差し掛かり、その車が見えなくなりました。

 

 

 

おかしい…同じペースで走っていたから見失うはずはないのに。

 

 

動揺した私は、速度を上げてその車に追いつこうとしました。

 

 

すると、急に暗闇から車が現れたのです。

 

 

急ブレーキを踏みましたが、止まり切れずに私はその車に追突しました。

 

 

私は車を降り、車に近づきました。それほど強くぶつけたわけではないので

運転手は無事だと思っていましたが、その車の様子がおかしいのです。たった今

走っていたはずなのに、ライトがついておらずエンジンすらかかっていません。

 

 

運転席を確認しようとしても人影が見えなかったので怖くなった私は車に戻り、

逃げるように走りだしました。

 

 

しばらくすると、後ろからまぶしいライトが私を照らしました。

 

 

バックミラーを見ると、そこにはさっきの車が…

 

 

車は全速力で追いかけてきます。フロントガラスが割れて、サイドミラーが外れています。ライトは片方だけがついています。ほとんど廃車同然なのにも関わらず、車はこちらに付きまといます。

 

 

もう一度カーブに差し掛かる直前、後ろで強い衝撃が…

 

追突されました。

 

それでもなんとか逃げようとカーブを曲がっていくと、

もう車はついてきませんでした。

 

 

何とか一命をとりとめましたが、

家について車庫で車体を確認すると、そこには初心者マークがついていました。

 

 

 

※フィクションです。

マスターボールでキャタピーを捕まえちゃったんだね

 子供のころ、家に友達を招いて遊ぶことが多かった人はその分忘れ物を預かることもあっただろう。子供の忘れ物は決まって上着やゲームソフトだった。しかし、何故か持ち主が見つからないケースもあった。きっと座敷童の忘れ物だったのだろう。私が一緒に遊んだ座敷童が忘れていったのは、ポケモンファイアレッドだった。プレイ途中のデータを引き継がせてもらった。手持ちのポケモンを強化し、四天王を倒した後最後の洞窟でミュウツーをどうしても捕まえることができなかった。タイマーボールを投げても投げても抵抗を続けるため、マスターボールさえあれば…という状況だったがあいにくそのデータで手に入るマスターボールキャタピーに使われていたのである。マスターボールキャタピーに…いくらでも手に入ると思っていたのだろうか?