ナッツ北原㊙ダイアリー

恵方巻を味わって食べたことがない。

路地裏の住人?

 バイトが終わった日、私は裏口のドアから出て階段を上る。ここには従業員しか知らない路地裏の住人がいる。それらは重いドアが開く音を聞いて私のもとへと駆けつける。愛くるしい瞳に吸い込まれそうになる。ここには猫の親子が住んでいるのである。となりのビルの細い道を抜けて、こちらのビルの汚い路地裏へと抜けてくるのだ。この路地裏は閉店後に帰宅する従業員の抜け道に過ぎず、通りを歩く人は見向きもしない。しかし、猫にとってはここが自分たちの家であり、育った故郷でもある。最初に住んでいたのは1匹の猫だった。しかし、1年ほど前に子供が生まれ、気づいたときにはすでに親と子2匹の計3匹で暮らしていた。オス猫の行方はわからない。子供を産ませて責任をとるつもりはないらしい。私はこの猫の親子をあまり相手にせず帰っていった時期が長かった。しかし、最近はこの猫たちに会わなければバイトに行った気がしない。汚い路地裏に住んでいる割に、猫たちの毛並みは綺麗で撫でるとやわらかい感触がする。親猫は撫でられても全く気にする様子がないが、2匹の仔猫は撫でようとすると逃げて、こちらの様子をうかがうのだ。そのうち一匹は私になついてくれたようで、甘えた声を出しながら私に近づくのである。乳歯が生えたばかりで痒いせいか、手のひらを噛んできた。血はでないものの、まあまあ痛い。今度おもちゃを買ってあげてみようか。ここ2回のバイトでは、このなついた仔猫だけが顔を出し、2匹は姿を現さなかった。この子は私に会うために待っていたのだろうか。

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どっちが自分になついている猫だ?思い出せない