ナッツ北原㊙ダイアリー

恵方巻を味わって食べたことがない。

最後のバイト

 今日でバイトが終了。2017年の夏から2021年冬までのおよそ3年半務めたレストランの仕事を辞めた。最初はキッチン用具と食用皿の洗浄から、半年後にはフライヤーにも入って仕事をしていた。キッチンではお客さんの注文が多すぎて、料理を準備し続けなければならない状況もありつらかったが何とか今まで続けてこれた。

 最後に裏口から帰るとき、ドアのすぐ裏には例の3匹の猫がいた。この3匹が揃って登場するのは2週間ぶりで、ちょうど辞める日に会えたのは運がよかった。そのうち1匹の自分によくなついている子猫の様子がおかしいことに気づいた。地面に張り付いて風化した黒いガムをなめている。ふと階段下にある裏口の方へ目をやると、残りの2匹はごみを漁っていた。私は近くのコンビニに駆けて2つのツナ缶を買い、裏口へと戻ってきた。今まで猫に餌をあげたことはないし、野生動物に餌をあげることが良いことだとも思ってはいないが、これは退職祝いだ。缶を開こうとすると魚の生臭いにおいに引き寄せられる。缶をうまく開けられずにプルタブが外れてしまったが、なんとか空いた缶の隙間にプルタブをねじ込んで外側に向かって引っ張るとやっと缶が空いておいしそうな肉が現れた。しかし、それは冷凍されていたようで、食べにくそうだ。表面を舐めているうちに溶けるから問題はないだろうが、温めてもらえばよかったかもしれない。そうとうお腹がすいていたのだろう。子猫よりも親猫が先にがっついている。缶は2つだけしか買わなかったから、1匹は順番待ちをすることになってしまった。建物の裏のアパートから人が出てきて、猫を見て笑った。それはかわいい猫の姿を見て思わずこみあげてきた笑いのように聞こえた。こちら側の建物は高さが低く、向こうからは死角になっていて自分の姿は見られなかった。その人が離れていくと、缶を置いた場所が袋のおいてある不安定な場所だったので、食べているうちに缶が階段から落ちてひっくり返ってしまった。急に餌が姿を消して困惑する猫のために、缶を持ち上げて餌を出現させる。再び食べ始めた猫を見守っていると、裏口が空いて他のアルバイトの子が階段を上がってくる気配を感じたので、私は猫のように逃げていった。