怪談話
あれは真夏の夜に山道を車で走っていた時の出来事です。
速度を上げて走っていると前方に見覚えのある車が見えました。
私はすぐ、その車が昼間に町で見かけた軽自動車であることに気づきました。
車は後ろに初心者マークをつけていて、その隣には凹みがありました。
恐らく、駐車の際に壁にぶつけてしまったのでしょう。
こんな夜更けに山道を運転していて大丈夫かな…と少し心配に感じたその瞬間、
私は車にある凹みが昼間よりも大きくなって、窓にも小さなひびが入っていることに気づき焦りを覚えました。
しばらくするとカーブに差し掛かり、その車が見えなくなりました。
おかしい…同じペースで走っていたから見失うはずはないのに。
動揺した私は、速度を上げてその車に追いつこうとしました。
すると、急に暗闇から車が現れたのです。
急ブレーキを踏みましたが、止まり切れずに私はその車に追突しました。
私は車を降り、車に近づきました。それほど強くぶつけたわけではないので
運転手は無事だと思っていましたが、その車の様子がおかしいのです。たった今
走っていたはずなのに、ライトがついておらずエンジンすらかかっていません。
運転席を確認しようとしても人影が見えなかったので怖くなった私は車に戻り、
逃げるように走りだしました。
しばらくすると、後ろからまぶしいライトが私を照らしました。
バックミラーを見ると、そこにはさっきの車が…
車は全速力で追いかけてきます。フロントガラスが割れて、サイドミラーが外れています。ライトは片方だけがついています。ほとんど廃車同然なのにも関わらず、車はこちらに付きまといます。
もう一度カーブに差し掛かる直前、後ろで強い衝撃が…
追突されました。
それでもなんとか逃げようとカーブを曲がっていくと、
もう車はついてきませんでした。
何とか一命をとりとめましたが、
家について車庫で車体を確認すると、そこには初心者マークがついていました。
※フィクションです。