ナッツ北原㊙ダイアリー

恵方巻を味わって食べたことがない。

無駄がないものは美しい

洗練された技術や、美術品の造形などに共通しているのは「無駄のなさ」だ。何度も改良を重ねていくうちに、それは機能性と美しさを兼ね備えるようになる。オリジン弁当のタルタルのり弁当はその最たる例といえるだろう。

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白身魚のフライが2枚、ちくわの磯部揚げが1本、端にはきんぴらごぼうを添えて、おかずの下には3枚の海苔が敷設されている。そのうえご飯の上には鰹節がのっていて、付属の醤油とタルタルソースで味付けできるというまさに至れり尽くせりの弁当。まずおかずについてだが、白身魚のフライとちくわの磯部揚げという組み合わせが素晴らしい。海苔おかかだけでも白米は十分に食べれるくらいなのに、ここにおかずが乗ると味が濃くてくどい弁当になってしまう可能性がある。しかし、淡泊な味のフライを使用しているためその心配は無用である。そしてちくわの磯部揚げ。唐揚げと言われて鶏肉が思い浮かぶのと同様に、磯部揚げといったらちくわ以外にない。そもそも見たことがない。この磯部揚げと醤油との相性が抜群にいい。これが白米の土地を二分するように斜めに鎮座している。かつてベルリンの壁がドイツを東西に二分したように。壁の向こうのまるまる肥えたフライを羨望の目で見つめるのはきんぴらごぼうだ。そして、おかずと白米に挟まれた海苔とおかかは醤油や揚げ物の油を吸収している。荒れた戦場についた痕跡が戦争を物語るように。そう考えると、このプラスチックの容器の中身がただの弁当ではなく人類史の縮図であることは明白ではないか。これが税込み320円とは驚きである。ただの食品が優れた芸術作品のように見えるのも、企業努力が裏に隠されているからだろう。

 補足だが弁当の横にある避難所は醤油やタルタルソースの空を入れる意図で配置されているが底が浅く、弁当が傾く可能性があるので、右利きの人は避難所を左側に向けて食べるといい。